井上陽水頌――それは天空から降りてくる
優れた詩や文章とは不思議なものだ。書き手はなにもわかっていない。
ただ夢中でそこにいるだけだ。そのとき、ことぱは何の気配もなく天空から降りてくる。
いつかテレビジョンで、井上陽水にある歌詞の意味をインタビューアが訊ねていたこと
がある。
案の定、陽水は困ってなかなか答えない。聞いてもだめだよと、わたしは画面に向か
っていったのを覚えている。ことばが含んでいるのは意味だけではない。言霊のような
ものや響きやイメージなどかかえきれないほど神秘的なのだ。
陽水にはそのような歌詞が多い。
優れた文章や詩はどこからかふいに降りてくるのだ。ただそれはだれにも降りてくる
わけではない。どうやら選ばれた人にのみやってくるようだ。
その歌詞の一例がここにある。
バレリーナ (部分) 井上陽水 作詞・作曲
街から25Kmの
森の芝生に眠って
そっと自分をなくした
あなたには
Good bye
遠くで山猫がほえ
いろんな夜を飛びはね
ねらいをつけた獲物は
私だろう
きっと
斬新なパラソル
喜びも悲しみも
単純なカラフル
いつまでもよろこんでいる
バレリーナ
この曲も狂うほどすばらしい。「あなたにはGood bye」「斬新なパラソル 喜びも悲しみ
も 単純なカラフル」あたりにくると涙さえでてくる。ぼくはいつのまにか、はるかな宙
を泳ぎだし美しくただよう、ここはどこ?
わたしにとって陽水はかけがえのないシンガーで、勝手にベスト30などをつくって楽
しんでいるが、この「バレリーナ」はそのベスト2に入る。ちなみにベストワンは「とまど
うペリカン」でる。この詞も曲もこれに劣らずすばらしい。こんなすごいものは天からの
贈り物のように降りてくる。優れた音楽や文学や絵画はそういうものだ、たぶん。
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