黒木瞳はやはり詩人だった
詩人仲間の間で、ときどき囁かれる会話がある。詩人には美人がいない。(でも女性も岸田衿
子や吉原幸子などいると私は反論したりしているが)。そんな中で美しい女優の黒木瞳が詩を
かいていることは知っていた。きちんと読んだことがなかったのだが、最近、たまたま第二詩集
『夜の青空』(角川書店)を読む機会があった。
平成三年の出版だから彼女が二十代後半から三十歳前後にかけてかいたものだろう。
果たして、この美人は詩人といえるのだろうか。
詩集をめくっていくと、こんな詩が眼に留まった。
月を跨ぎながら
明日の風を追いかける雲の背中を
僕はただ見送る
君と僕の上にかかる雲の行方
晴れるかどうか分からない
せめて僕たちは
逢瀬の隙間に二人でみつめる
夜の青空
「夜の青空」から
夜には青空は見えない。暗黒の夜空のように、どこに向かうのか未来の見えぬ二人。
それでも愛する二人は夜空に「青空」を見ようとする。その心情が巧みに表現されている。
「夜の青空」とはいいタイトルだ。
この詩集には空、夜、月、宇宙、寂しさ(孤独)という言葉が多い。たとえば、
恋人はいない
未来を共有する人もいない
所詮ひとり
淋しさは宇宙から来る
僕の体で作ったものしゃない
「ひとり」から
夜を隠れ蓑にして
僕は一人で泣いた
「夜のしばり」から
ひとりの夜は
僕の心をからっぽにする
‥‥‥‥‥‥
夢をチューインガムにして
噛みながら眠る
「きょうの季節」から
空・宇宙の中に一人で投げ出されている自分がいる。その孤独の深み、そこから湧出
する抒情。この世界観や孤独感が彼女に詩をかかせている。奥行きのある世界、内部
から湧出する孤独感、漂う抒情。やはり黒木瞳は詩人なのだと思う。美人の詩人がこ
こにいる。ただ「僕」が頻繁にでてくるのが気にならなくもない。異性に変身して書く、
そんなちょっぴり少女趣味的な面が。でも若い頃の作品だからいいか。
黒木瞳のホームページにも「五行詩」が載っている。その中に気に入った詩があった。
空をみあげて
顔にあたる雨
あなたに会いたいと泣いている
涙がかわくのは空の上
雨は空の途中からふっている
雨は涙でもある。そして、そうなんだ、雲はまだ半分人間界に属している。そこを越えた
宇宙との呼応、その彼方へと、癒しや、何ものかを希求する黒木の詩ごころがあるの
だろう。
最近、第三詩集『恋のちから 愛のススメ』(扶桑社)を出したようだ。
これからもかき続けてほしい。
黒木瞳のホームページはこちら。http://www.kurokihitomi.net/
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