ありがとう桜庭英子さん
友人の詩人桜庭英子さんが去る1月11日、永眠されたことをご家族からのハガキで
今日知りました。
病気で入退院を繰り返していたのを知っていましたが、こんなに早くとは思ってはい
ませんでしたので、ショックを受けました。
桜庭さんとは詩誌『地球』の同人仲間ですが、「思い川」という個人誌を出していて、
わたしも数回依頼されて原稿を書きました。彼女は巧みな表現で美・感動・抒情を
追究しつづけ、魅力的な詩を遺しました。
次の詩は昨年末刊行された詩誌『地球』145号に載せられたもので、おそらく遺作と
いわれるものになると思います。
ふいにこの存在を襲うどうしようもないものへの思いや揺らぐ心情が抑制されて表現
され、無念さや哀しみがひしひしと伝わってきます。最期の際にいたってのこの抑制
された表現には詩魂のようなものさえ感じました。
たいへんお世話になりました。
ありがとう、桜庭英子さん。
「途次」
気がつけば
萎れた薔薇となって仆れていた
いまごろ去ってきた部屋の
読みかけの赤い詩集は
きみが開いてくれたページの
柔らかな花びらのフレーズも
ついに解説されないまま
風の視線に晒されているだろう
あのときわたしは
花の香りに酔い痴れていた
いきなり彼奴(サタン)に背後から突き落され
転がりながら墜ちてきたのは
見知らぬ町はずれのホスピタルだった
(背椎移転による不全麻痺)
新しい名まえをつけられて失った感覚
まったく動かなくなった下肢に
レインボーカラーのタオルケットを纏い
かすかな奇跡を希いながら
バラマウントベッドの上で明日を夢みる
―――忘れないでね
枯れかけた薔薇を
覚えていてね
わたしは今 此処にいる―――
往くも還るもできずに
エタノールの仄かに漂う異郷の
道のほとりに うずくまっている
雲の切れ目から射してきた一条の光
そう きっと
きみが助けにきてくれたにちがいない
それとも?
――2007年7月7日――
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